
応募対象の概要
首都高地下化によりスローモビリティが表に現れる日本橋に日常利用される防災船着場を計画した。川と街の境界には強くて柔らかいインフラが求められると仮説を立て、身体スケールな所作を導く形態を堤防に挿入し、固い境界が柔らかい居場所になるよう設計した。都市の輪郭を描くように水上交通が推進されることを目指す。
フェーズフリーな性質の概要およびアピールポイント
阪神淡路大震災を機に東京各地に防災船着場が設置された。しかし卒業研究により、災害時の輸送拠点である防災船着場は認知度が低く、整備が不十分であることが確認できた。日常利用を図り認知度を上げるため、東京中の水辺のフィールドワークから川と街の境界に人のふるまいが見られる要素をスケッチで記録し、所作を導く形態から空間を設計した。備蓄倉庫で保管されているものが食堂で提供されたり、出勤で船を利用する人で賑わったり、川と近い距離のカフェで一息ついたりと、防災船着場が平常時から利用され日常のシーンの一部となる。災害時には帰宅困難者の一時避難場所となり、また大規模な物資・人員輸送の拠点として機能する。

既存の堤防を掘削することで、強く隔てられた境界が柔らかい居場所となる。さらに待合室や備蓄倉庫、食堂などを分散配置し、川と街をまたぐように大屋根を架けて人々を受け入れる。江戸時代の川沿いは都市の表として人々が集まっていたように、防災船着場に賑わいが生まれ、日常利用できる場所として更新される。

バリアフリーを考慮した1/12勾配のスロープで川と街の高低差を繋げたため、物資の移動もスムーズに行うことができる。また帰宅困難者の一時避難場所にもなり、ブルーシートなど備蓄倉庫で保管されているものが配られ、非常時の拠点としても機能する。日常の一部となった防災船着場は、非常時に迅速な対応が可能となる。